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COLUMN

「作れる」と「作るべき」は、別の話。CTOに求められるROIへの問い。【AI時代の創造と挑戦の記録】

AIの進化によって、SaaSの役割そのものが問い直され始めています。

  • 「作れる」と「作るべき」は別の意思決定
  • SaaSは死ぬのではなく変化している
  • 意思決定は最終的にROIに収束する

この記事では、AI時代におけるSaaSの位置づけと、CTOに求められる意思決定の視点について整理します。

SaaSは死ぬのか。

少し前から、CTOや情報システム部門の責任者と話すとき、話題の重心が変わってきた気がしている。

以前は「どのSaaSを入れるか」だった。選定の相談、比較検討、導入後の定着。そういう話が多かった。でも最近は違う。「このSaaSって、本当に必要ですか」という問いから始まることが増えた。コスト削減の文脈だけではなく、もっと根本的なところでの問い直しだ。

AIがコードを書き、AIがドキュメントを整理し、AIがワークフローを自動化できる時代に、既存のソフトウェアへの投資をどう考えるか。この問いは、2025年から2026年にかけて、経営層と技術責任者の両方が避けて通れないテーマになってきたと感じている。

「SaaSが死ぬ」という話の正体

2024年末、MicrosoftのSatya Nadella CEOが「伝統的なビジネスアプリケーションはAIエージェント時代に崩壊する可能性がある」と発言した。欧州フィンテック大手のKlarnaはSalesforceとWorkdayの契約を終了し、AIベースのシステムへの置き換えを進めると宣言した。この話がSNSで拡散し、「SaaS is Dead」という言葉が業界を駆け巡った。

株式市場の反応は早かった。

米株式市場に激震が走ったクロード・ショック、その本質はAIエージェントが優れているからではない ソフトの提供側にも利用側にもビジネスモデルの転換が求められている | JBpress (ジェイビープレス)

AIに代替される懸念から、米Salesforceなど大手4社の時価総額は2025年末から1ヶ月足らずで15兆円が消失した。

センセーショナルな話だ。でも、これは本当なのか。

半分は本当で、半分は違うと思う。

数字の上では、SaaSはまだ死んでいない。GartnerはSaaS支出が2024年約2,508億ドル、2025年約2,991億ドルと増加する見通しを示している。そしてB2B SaaS企業の76%がすでに自社製品にAIを組み込み済みであり、92%がさらなるAI利用の拡大を計画している。

正確に言えば、SaaSが死ぬのではなく、変態しつつある。SaaSという概念の一部は生き残るが、固定的なUIはいずれ消滅し、各SaaSが持つ機能がモジュール化してバラバラに解体され、異なるコンテキストによって再構築されていく。

「死」ではなく「脱皮」だ。皮を脱いでいる最中なのに、脱いだ皮だけ見て「死んだ」と言っているような状態とも言える。

SaaSとは何者なのかを、もう一度整理する

SaaSのビジネスモデルをひと言で言えば「最大公約数」だ。

世の中の多くの企業が共通して必要とする機能を、できる限り安価に、安定した品質で提供する。そしてアカウント数(シート数)で課金することで毛コストを予測しやすく、企業規模に関わらず適切なコスト負担に落とし込む。このモデルは「ソフトウェアを利用する人間が増えるほど価値が高まる」という前提に立っており、AIエージェントが人間の労働を代替する世界では、ベンダーの収益と顧客の成功が相反する関係に陥るという矛盾をはらんでいる。課金モデルそのものが問い直されているのは確かだ。

ただし、ここで一点だけ強調しておきたいことがある。

AIを活用したバイブコーディングで「それっぽいもの」は今すぐ作れる。UIも機能も、ある程度のものなら数日で形になる。でも、それは「似たもの」であって「同じもの」ではない。

セキュリティの堅牢化、法令対応、大規模インフラの維持、24時間のサポート体制、バージョンアップへの追従。こういうものが何年もかけて積み上がって初めて、ビジネスの現場で本当に使えるものになる。見えないコストが、とんでもなくかかっている。そこに収斂されたものは、簡単には真似できない。

それでもSaaSで解決できない領域がある

SaaSは最大公約数ビジネスだから、構造上の限界もある。個々の企業が持つ固有の要件や、業務の微妙な差異を吸収しきれない。

だから「業務をサービスに合わせる」という発想が生まれる。

ただ、全てがそうとは限らない。

日本企業には「DXの谷」とでも呼ぶべき業務が、相当数残っている。

今は違う。人とAIの開発力を組み合わせれば、その企業だけに特化した小さなソリューションを、低コストかつ短期間で作れるようになってきた。

結局、問いはROIの一点に収束する

「作る」ことのハードルが劇的に下がった。

でも、ハードルが下がったからといって、なんでも作ればいいわけではない。

作れてしまうからこそ、「作るべきかどうか」を問う力が重要になる。

AI時代のCTOに求められるのは「作れるか」ではなく、

  • 作るべきか
  • 使うべきか
  • 捨てるべきか

を問い続ける判断力だ。

機能を作ることと、価値を生み出すことは、別の話だ。

私たちが提供する価値は何か?

ここを問い続けられるかどうかが、これからの技術責任者を分けていく。

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