検索のルールが変わりつつあります。SEOで順位を取っていても流入が減る——その背景には、AI検索の普及があります。 これからのECに必要なのは「検索されること」ではなく「AIに選ばれること」です。
- 検索流入は減っているのに順位は変わらない
- AIが情報の“入口”を担い始めている
- 重要なのは「流入」ではなく「推奨されること」
本記事では、LLMO(AI検索最適化)の概念と、 AI時代にブランドが取るべき戦略について解説します。
ある越境EC事業者と話したとき、こんな言葉が出てきた。「オーガニック流入が半年で25%落ちました。広告費は増やしているのに、なんか全体的に重たい感じがしていて」。原因として疑ったのは、SEO順位の下落だった。ところが調べてみると、主要キーワードの順位自体はほとんど変わっていなかった。検索順位は維持しているのに、ユーザーが来なくなっている。この奇妙な現象が、今年に入ってから複数の事業者から聞こえてくるようになった。特に越境ECのストアでこの傾向が多く出ていると感じる。
2026年4月の時点で、ChatGPTの月間アクティブユーザーは世界で4億人を超えた。日本国内では生成AIサーチの利用率が前年比で約180%増。GoogleのAI Overviewsはすでに検索クエリ全体の約45%に表示されている。
これはユーザーの行動が変わりつつある予兆だと捉えている。「検索窓にキーワードを打って、リストをスクロールして、気になるページを開く」という動作が、「AIに聞いて、答えをそのまま受け取る」に置き換わりつつある。
ページに来ないのではなく、ページを必要としなくなっている。
そして問題の核心はここ——AI検索の応答の中に、自社ブランドは入っているだろうか?
LLMOとは何か、なぜ今なのか
この流れを受けて注目を集めているのが、LLMO(Large Language Model Optimization)という考え方だ。
ChatGPT、Gemini、Perplexity、そして今年から本格化しているGoogleのAIモード……あらゆるLLMの回答の中で、自社ブランドが「引用・言及・推奨」される状態をつくるための最適化施策を総称する言葉だと思えばいい。SEOが「検索エンジンにインデックスされる」ための最適化なら、LLMOは「AIに選んでもらう」ための最適化だ。
2026年1月20日、LANYが主催した「LLMOカンファレンス2026」があった。検索・PR・ブランディングの専門家が集まり、AI検索時代に生き残るブランドの条件を論じたイベントだ。
そこで示されたのが「ブランド名の月間検索ボリュームとLLMによる言及数には相関関係がある」という知見だ。もともと人に検索されているブランドほど、AIにも選ばれやすい。
これはある意味で当たり前に聞こえるかもしれないが、含意は深い。LLMOの勝負は、コンテンツの「技巧」よりも、ブランドの「地力」に依存する部分が大きい——ということだ。
数字が示す、先行者優位の現実
ここでコンバージョン率の話をしよう。Speeeの分析によると、AI検索経由のトラフィックのコンバージョン率は、従来のオーガニック検索経由と比べて約4.4倍に達する。最初に見たとき「さすがに大げさでは」と思ったが、考えてみると理由はわかる。AI検索でブランドが推奨されるということは、すでにある種の「選別」が終わっている状態でユーザーに届くわけだ。「AIが良いと言っていた」という信任効果が、購買意欲にそのまま乗ってくる。
さらに、Brand UPが2026年上期に実施した大規模調査がある。日本市場8業界・50カテゴリを対象に、ChatGPT・Gemini・Google AI Overviews・Google AI Modeの4プラットフォームを横断し、約15,000プロンプトを投げて約80万件の引用状況を分析したものだ。
その結論——「カテゴリごとに引用率80%超のドメインが存在する」。勝者がほぼ固定されている状態だ。これはSEOの黎明期と構造が似ている。先行者が有利なフェーズに、今まさにある。具体例を出すと、海外のオフィスチェアブランド「ハーマンミラー」がある。ChatGPTに「姿勢を改善するための良い椅子を教えてください」と尋ねると、ほぼ必ずハーマンミラーが挙げられる。何百万ものレビュー記事、専門誌の言及、ユーザーによる発信が積み重なった結果として、LLMの学習に深く食い込んでいる。これは一朝一夕でできるものではない。
結局、問われているのはブランドの「本物さ」
LLMO対策の具体的な施策として語られるのは、E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)の強化、Q&A形式のコンテンツ整備、構造化データの実装、ブランド名の検索ボリューム向上といったものだ。どれも間違ってはいないし、実際に効果もある。ただ正直なところを言えば、これらはすべて「ブランドの本物さを表面化させるための作業」に過ぎない、という気がしている。
これはEC事業者にとって、痛い話でもあり、チャンスでもあると思う。広告予算が潤沢でなくても、自分たちの専門性を深く発信し続ければ、AIに選ばれる可能性がある。逆に、「それっぽい」コンテンツを大量生成しているだけでは、AIには通用しなくなってくる。
LLMOが問い直しているのは、突き詰めれば「そのブランドは何者か」という問いだ。SEOの時代も、SNSの時代も、本質的には同じ問いが繰り返されてきた。表面的な最適化を積み重ねるよりも、ブランドの核心を明確にして、それを一貫して発信し続けたほうが長期的には強い——この原則はLLMO時代でも変わらない。
何から始めるか + 締め
まず自社ブランドに関連するキーワードをChatGPTやPerplexityに入れてみて、どのブランドが推奨されているかを確認することが第一歩だ。自分のブランドが出てこないなら、どのブランドが出てきているかを観察し、そのブランドが何をやっているかを分析する。競合のLLMO状況を把握することが、現状最も効率の良い入口になる。
コンテンツの軸は「比較」と「Q&A」が強い。「○○と△△ どちらがいい?」「○○の選び方は?」という問い形式に対してAIが参照するコンテンツは、概ねこのパターンだ。専門家としての知見を、この型に落とし込んでいくことが今できる現実的な対策になる。
今年のEC業界は、「流入」の意味を問い直す年になりそうだ、と思っている。ページに来てもらうことが目的だった時代から、AIを経由して「選ばれた状態」でユーザーに届く時代へ。その移行期の今に何を仕込むかが、2〜3年後の差になる。そういう予感がある。
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※XAが運営するNoteメディアの記事を転載しています。
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